Cabbit作品を終えて
つい最近、Cabbitから出てる四作品『翠の海-midori no umi-』『キミへ贈る、ソラの花』『箱庭ロジック』『鍵を隠したカゴのトリ ―Bird in cage hiding the key―』を続けてクリアしたのでその感想を書いてきます。すべてシナリオ・企画は御厨みくり。
※『鍵を隠したカゴのトリ』感想は既プレイ前提のためネタバレ注意です。
『翠の海-midori no umi-』
御厨みくりの描く隠蔽体質系ヒロインズ第一弾。
このライターはなぜかミステリーを書きたがるけど出来はお世辞にもいいとは言えない。序盤に大きな謎を提示してワクワク感を煽るのはいいんだけど、たいてい謎を解く鍵はヒロインたちが握っていて、しかも終盤まで教えてくれないからどうしても尻すぼみになる。
そういう構造なので、必然的にヒロインは全編を通して主人公に重要な事実を隠し続ける秘密主義……を超越した隠蔽体質に仕上がる。
この作品は記憶喪失の主人公が森の洋館で事態の全貌を把握しようと頑張るんだけど、みちるというヒロインがひたすらその邪魔をしてくる。
そりゃまあ個別でみちるにもやむにやまれぬ事情があることが明かされて、やりたくないことを嫌々やってきて辛かったよ的な好感度調整が入るんだけど、
ならこの笑みはなんなんだよ。完全に人を騙すことに愉悦を覚えてる人間の笑みじゃん。
話を読み進めるほどヘイトが溜まるヒロインは初めてだよ。逆はよくあるけど。
ただまあ最終的にはちょっとかわいいと思っちゃった。美少女はズルい。
・それでも双子√は至高
順当にいけばこの二人を最初に攻略することになるんだけど、はっきり言ってここがCabbit(この作品ではなく、Cabbit)の全盛期です。あちこちで言われてることだけどCabbitはキレイな右肩下がりのブランドなので。
互いを想い合っているのにすれ違う健気な姉妹愛と、二人の仲を取り持とうとする主人公の優しいお話。キャラクターに幸せになってほしいと思っている時間が、物語に触れていて一番幸せな時間です。
なんならこのゲームは双子√だけで完成してるかもしれない。これからプレイしようって人はここで止めておけば、Cabbitへのイメージがダウンせずに済んでいいんじゃないかな。
紡√もぼくは大好きです。あれは強い「愛」を描いているお話ですよ。
他のヒロインたちも別に悪くはないです。対外的な評価も高いしおすすめするならこの作品一択。
『キミへ贈る、ソラの花』
この作品は他の三作品と違って無理やりミステリーをやろうとしなかったので佳作になれました。
幽霊と、幽霊が見える体質の生徒たちが一緒に学園に通う話です。幽霊は成仏するものなので自然に死生観の話になるし、基本ほのぼのとした世界観なのでキャラがふざけたことしてても笑って見てられる。
この路線で行けばよかったのによほどミステリーが書きたかったのか、残りの二作は残念ながら失踪事件が起きたり人が死んだりします。
・とにかくまつりがかわいい
明るくハイテンションな幽霊の女の子なんだけど、この作品は彼女に支えられているといっても過言ではない。ずっとあの花畑で笑っていてほしい。ヒロインが嬉しいとこっちまで嬉しくなってくる……そう思わせてくれるキャラが一人でもいると物語は一気に耀きを増すものです。
キャラがかわいければ多少シナリオがアレでも許せるのがエロゲの強みなので、まつり√ははっきり面白いと言える。
雛菊もキャラは好きだったんだけど個別の印象は薄い。
あと20分くらいの短いグランドが泣ける。本編を完走したご褒美みたいな感じで嬉しかった。
まあそんないいところもこのメンヘラ女のおかげで全部台無しだけど。
この西園奏菜とかいう女、すぐヘラって周囲に当たるわ悲劇のヒロインぶって主人公によしよしされるわで本当にプレイしていて不快だった。
キミソラは人を思いやる心を持った優しいキャラたちの物語だけど、西園さんは普通に性格が悪いと思う。
この作品にはもう一人、有名なヤンデレヒロインがいるんだけどあんなの西園さんと比べたらかわいいもんです。
『箱庭ロジック』
御厨みくり主人公は軽い下ネタも受け付けないうような潔癖な性格なんだけど、それがドMヒロインと最高に相性が悪かった。
変態と常識人のコンビと言われたら、変態キャラの変態発言に、常識人キャラが鋭いツッコミを入れてドッカーン……みたいなのを期待するはずだけど、
なんだよこのヘボツッコミは。
この二人はずっとこんな感じ。ぼくが意地悪でつまらないシーンを切り取ってるとかじゃなくてほんとうに終始この調子で、こんな会話を10時間近くに渡り見せられ続けた結果ぼくはこのゲームが少し嫌いになりました。
そのヒロインに限らず、主人公が周囲のキャラにできるだけ「普通」であることを強制してくるのが見ていて嫌な気持ちにさせられました。自分の「普通」を相手に押し付けないでください。
なんか経済の実証実験とかやってて市外との繋がりが絶たれた特殊な街(箱庭)で高校生6人の失踪事件が起きたからその謎を解決しようとするんだけど、例によってヒロインたちは隠蔽体質なので何も知らない風を装いながらたくさん隠し事をしていて、そのせいで捜査がまったく進まない。
そして真相はまあいいにしても、ラスボスがとってつけたような小物で肩透かしを食らう。「あえて小物にしました」みたいな書き方してたけどそれなら必要なかっただろ。
メインヒロインの√を一本道でやらせてくれたらまだマシだったかもしれない。
ぼくは合わなかったけど、人によってはCabbitで一番好きという人もまあまあ見かけるのでこれは相性の問題かも。
『鍵を隠したカゴのトリ -Bird in cage hiding the key-』
やらなくていいです。
やるんだったら腹を括ってください。ほんとうにロクでもない。
驚くべきことにこのお話、物語開始時と終了時で、主人公たちの持ってる情報量が全く変わらない。ならこれ5分で終わる話だったよね?
ヒロインAの母親が人を殺してその罪を娘になすりつけようとするんだけど、それを見ていたヒロインBは何を思ったか自分が犯人だと主張し出して、そのせいで真犯人の逮捕が遅れますw
一万歩譲って罪を庇ったところまではいいとしても、訴えれば勝てるだけの証拠が手元に揃ってるのに頑なに真実を口にしないのはマジでどういうことなんだよ。
ヒロインの身の潔白を証明しようと駆け回る主人公を、すべてを知っているヒロイン本人となんとなく犯人に目星がついているヒロインと重要な情報を隠しているヒロインは笑顔で見守ります。人の心がない。
いや、そういう心構えとか内面の問題が深く絡み合って色々言い出しづらかったのは分かるんだけど、そういう葛藤は殺人事件が起きてる時にやるものじゃない。まず先に事件を解決させて、その後でじっくり向き合うべきものだと思う。順序が逆。
(主人公と夜の母親が知り合いだったとことか、面白過ぎて爆笑しちゃったよ)
殺人事件というシリアスな土台を逆手に取った、世紀の茶番劇でした。
四作通して
キャラ達に隠し事させんのやめようよ。他の御厨みくり作品もこんな調子だとしたらマジでそれは悪癖だと思う。キャラクターの内面の成長に焦点を当てた話はちゃんと面白くて感動できるんだから、あとはノイズだけどうにか取っ払ってほしい。それだけです。以上。
初ブログ&エロゲプレイ本数100達成
タイトルの通りです。エロゲブログ始めました。
と言っても感想は批評空間の方で済ませているので、多分あまり動くことはないです。ブログとかよく分からんし……。レイアウトとか自分で考えるのめんどいし……。
感想ブログの態度としては、
いいものはいい、悪いものは悪い、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと、あらゆる想いを言葉の限りに語り尽くす。
これに尽きるので多分相当辛口というかシンプルに口が悪い時が多いと思います。これが批評ならまだ自重というか感情的な悪口は控えると思いますが、あくまで自由な感想ということで書かせていただきますのでご了承ください。ネガティブな意見は見たくないという人は、合わないと感じたら無理せずブラウザバックを推奨します。
それと、一昨年あたりからマウスポチポチしてたエロゲのプレイ本数が本日めでたく100を数えました。ので、お気に入りの作品5選! みたいなのやろうと思います。あくまでお気に入り、です。おすすめじゃないです。批評空間での点数とも異なります。
マイナーだけど面白い、名前は知られているけど変な偏見を持たれている……なんとなくそんな感じの選考です。では。
『Renaissance』
2001年にJINというブランド(これしか出してない)から発売された学園伝奇AVG。
宗教学と言語哲学をベースとした、どこか退廃的な雰囲気が漂う今作は、不気味な顔を覗かせながらも伝えたいことは一貫した物語です。作品の内容を語ろうとすると、いったいどう説明したものか困ってしまうので……
「言葉」「世界」「芸術」「宗教」「親」
ここらへんの単語に少しでも興味がある方は、もしかすればドハマりする素質アリかもしれません、とだけ言っておきます。あまり無責任なことは言えない。
FANZAの500円セール常連なのでよかったら買ってみてください。システム周りは難ありですが。
『きみと僕との騎士の日々 -楽園のシュバリエ-』
2014年にpiririから発売の今作はわりと問題作です。その年のKOTYeにエントリーしたほど。
その「クソゲー」たる所以はシナリオの根幹に関わるものなので言えません(これすらもネタバレか?)が、たしかにアレはダメな人はとことんダメだと思います。
しかし、主人公たちとしっかり向き合い、彼らの歩んできた騎士の日々に寄り添うことができていれば、物語は決してプレイヤーを突き放すことはありません。この作品はちゃんと救いの手を差し伸べてくれている、あとはその手を取れるかどうかだ。……と、これだけだとこいつ何言ってんだという感じでしょうが、とにかくプレイしてみてほしい! いろいろな意味で退屈はしない物語です。
『あえかなる世界の終わりに』
2005年にキャラメルBOXから発売。
この作品は、正直もう少し評価されてもいいと思う。
AI技術が進歩した近未来、クラスメイトのストーカー事件に端を発する大きな陰謀――。
「日常」と「非日常」の書き分け、刻々と変化していく環境に対する主人公の向き合い方など、このお話のよいところをあげたらもうキリがないくらいなのですが。
こちらも500円セール常連組です。ぜひ。
『彼女、甘い彼女』
せっかくなので同人からも一作。2015年夜のひつじ様から発売。
ジャンルとしては抜きゲーで、プレイ時間も3時間ほど。
ですがこの作品はとにかくヒロインが魅力的です。電波系とも不思議ちゃんとも形容しがたい、独特のテンポ感を持ったヒロインとの会話がひたすらに楽しい。
言うなれば「沼」ヒロインです(ものすごく誤解を受けそう)。彼女の魅力にだんだんとハマっていく快感はporori(この作品のライター)テキストならではの体験です。
『水月 -すいげつ-』
魂。
さいごに
他にも『ゆのはな』『ロスト・エコーズ』『Purely ~その狭い青空を見上げて~』あたりは迷いましたが、ぼくが紹介するまでもないかなと。『水月』は別格として。
まわりを見ればプレイ本数四桁越えがごろごろいる中で、ようやく100本なんてまだまだ若輩者もいいところですが。これからも細く長い趣味として続けていけたらと思います。では。